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診療科案内

呼吸器内科

診療内容

気管支鏡による検査・治療

気管支鏡検査は、肺または気管支など呼吸器の病気を正確に診断するために、気管支鏡を気管や気管支の中に挿入して内腔を観察したり、組織や細胞、分泌物などの検体を採取したりする検査です。当科では年間およそ250例の検査を実施しています。最近では、肺がん診療の進歩に伴い、新しい治療標的や耐性機序の診断のため、気管支鏡検査を複数回受けていただくことが増えました。そこで、より患者さんに苦痛の少ない、診断精度の高い気管支鏡検査を目指して、超音波気管支鏡や細経気管支鏡、さらにバーチャル気管支鏡も活用し、診断率向上に努めています。また、難治性気胸に対するEWS(シリコン製充填剤)を用いた気管支瘻孔閉鎖術や、北部九州でも数施設しか導入されていないクライオ・プローブを用いた悪性気道狭窄解除術・気管支腫瘍摘出術など、気管支鏡インターベンションも積極的に実施しています。
(文責:岩永 健太郎)

肺がん

肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍で肺そのものから発生したものを原発性肺がんといい、通常肺がんといえば原発性肺がんを指します。
肺がんの治療は、①手術、②放射線療法、③薬物療法、④緩和療法に大別され、組織型やがんの進行の程度、体の状態、年齢、合併症などを考慮して、患者さん一人一人に最適な治療法を選択します。特に集学的治療が必要な場合は呼吸器外科グループや放射線治療医、腫瘍内科医と綿密に連携をとりながら診療にあたっています。 また肺がんの薬物療法では、2002年に最初の分子標的薬が発売されましたが、その後も多くの新たな薬剤が開発され、特定の肺がんにおいてはめざましい予後延長が図られました。さらに近年、新たな免疫療法が開発され、その効果が期待されています。当科では九州肺癌機構(LOGiK)、西日本がん研究機構(WJOG)のメンバーとして積極的に臨床試験に取り組んでいます。
(文責:岩永 健太郎)

気管支喘息

喘息は、アレルギーなどを原因とする炎症によって気管支が狭くなる病気です。炎症が続いたり、気管支が狭くなることで、呼吸をするときにゼイゼイ、ヒューヒューといったり、息苦しくなったり、咳が続いたりします。診断は問診・診察や呼吸機能検査、呼気NO検査(肺の中のアレルギーの程度をみます)などで総合的に行います。必要に応じてアレルギーの抗原検査も行うことがあります。喘息に関与する抗原としては、ペットやダニ、ハウスダストなどが多いです。治療は、抗炎症薬(ステロイド)、気管支拡張薬の吸入療法が中心となります。アレルギー抗原が特定された場合は、その抗原からの隔離(環境調整)でよくなることもあります。通常の治療で改善が乏しい場合は、抗体製剤といって、体内でアレルギーを引き起こす原因物質(抗体やサイトカインなどの物質があります)を抑制する薬剤の使用をすることもあります。
(文責:加藤 剛)

COPD

COPDはタバコの煙や大気汚染物質などの有害な物質を長い間吸い続けることで起こる肺の病気です。以前は肺気腫や慢性気管支炎などと呼ばれてきました。COPDの患者さんの肺では、気道が炎症を起こすことで咳や痰が長期間持続したり、肺胞の壁が壊れることで、動いた時に息切れを感じたりします。これらの病態は進行性で、一度壊れた肺胞が治療で元に戻ることはありません。診断は、呼吸機能検査で行います。必要に応じてレントゲン検査やCT検査、血液検査などを行います。COPDの患者さんは心臓病、糖尿病、骨粗しょう症など、全身のその他の病気を合併しやすいと言われており、それらの検査を行うこともあります。治療の第一歩は禁煙です。禁煙を行うことで、それ以降の進行の速度を抑えることができると言われています。薬物療法としては、気管支拡張薬、去痰薬などがありますが、残念ながら一度壊れた肺を元に戻す薬はなく、いずれも対処療法となります。運動量の低下から、全身の筋力低下、呼吸機能低下をきたすため、呼吸リハビリテーションや栄養療法なども重要です。進行して非可逆的な呼吸不全をきたした場合は、在宅酸素療法の導入を行います。
(文責:加藤 剛)

在宅酸素療法(HOT)

肺疾患で慢性的な低酸素をきたした場合は、在宅酸素療法の適応となります。効果としては低酸素による呼吸困難感が改善することで日常生活の質が向上することの他に、低酸素による体内の各臓器への障害の予防、肺高血圧の予防などがあります。また、長期の生存率の改善や入院の減少などが報告されています。開始する場合は、1週間程度の入院で適正な流量の調整、酸素使用方法の取得訓練、酸素を行ったうえでの日常生活動作の訓練、呼吸リハビリなどを計画的に行います。火気に近づくと引火し、やけどやボンベ爆発の危険性があり、禁煙が必須となります。
(文責:加藤 剛)

特発性間質性肺炎

息を吸うと口や鼻から入った空気は気管や気管支を通り、最後に風船があつまったような肺胞という構造までたどり着き、ここでガス交換が行われます。その肺胞と肺胞を囲んでいる壁の部分を間質と呼びます。この間質に何らかの原因で炎症や損傷が生じ、壁が固くなる(線維化)ことで、酸素を取り込みにくくなる病気が間質性肺炎です。間質性肺炎の主な症状は咳、労作時の息切れですが、病初期では無症状であることも多い病気です。原因は膠原病・薬剤・原因物質の吸入など様々ですが、その中でも原因不明なものを特発性間質性肺炎(IIPs)といいます。特発性間質性肺炎は主要な6つの病型、稀な2つの病型および分類不能型に分類されますが、その中でも特発性肺線維症(IPF)が最も頻度が多くわが国におけるIPFの疫学調査では、発症率が10万人対2.23人、有病率が10万人対10.0人とされています。しかし病初期は無症状であることから本当はもっと有病率は高いことが推測されています。IPFは50歳以上の男性に多く、ほとんどが喫煙者であることから喫煙が「危険因子」であると考えられています。間質性肺炎の診断のために胸部レントゲン、胸部CT、肺機能検査、血液検査、6分間歩行、血液ガス検査、気管支鏡による気管支肺胞洗浄や胸腔鏡下肺生検などを行います。治療は個々の分類に応じて行いますが、IPFに対しては抗線維化薬(ピルフェニドン、 ニンテダニブ)を使用し、その他のIIPsについては副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が使用されます。
(文責:久保田 未央)

過敏性肺炎

細菌やウイルスなどの病原体が原因でなく、抗原と呼ばれる有機物の粉塵や化学物質を繰り返し吸い込んだことによるアレルギー反応が原因となって生じる肺炎です。抗原としては様々なものがありますが、頻度の高いものとしてカビ、鳥類の排泄物に含まれるタンパク質、きのこの胞子、 細菌の一種などがあります。発症には季節性があることも多く、春から秋、特に夏に多く見られます。過敏性肺炎の症状は咳、息切れ、発熱などで抗原を回避することで症状が改善します。診断のために胸部レントゲン、CT、血液検査による抗原に対する抗体の検出、気管支鏡検査などが行われます。軽症であれば抗原を避けることで改善しますが、抗原が不明で抗原回避が難しく病状が進行してしまった場合や酸素が必要となった重症例では副腎皮質ステロイドなどによる治療が必要となることがあります。
(文責:久保田 未央)

サルコイドーシス

サルコイドーシスはおもに類上皮細胞やリンパ球などの集合でできた肉芽腫という結節が全身のさまざまな臓器にできる原因不明の病気です。病気の起こる部位はリンパ節、肺、眼、皮膚が多く、頻度は少ないですが心臓、筋肉、肝臓、 神経、腎臓にも出現することがあります。男性よりやや女性に発症しやすく、女性では20-34歳、50-60歳、男性は20-34歳での発症が多くなっています。サルコイドーシスの症状は臓器によって異なり、眼では霧視(霧がかかったようにぼんやり見える)、羞明(まぶしい)、飛蚊症(ちらちら視野に小さいものが移動する)などが出現します。皮膚では皮疹が、肺では咳、息切れが出現することがありますが約30-40%の患者さんは自覚症状に乏しく健康診断で発見されています。診断には病変の組織を採取して、サルコイドーシスに特徴的な肉芽腫を証明することが最も重要ですが、胸部レントゲンやCT、ガリウムシンチなどの画像検査、血液検査・心電図検査・気管支内視鏡などさまざまな検査を行い総合的に診断します。サルコイドーシスは自然に軽快することもある疾患であり、無治療で経過観察とすることも多いのですが、 急速に進行する場合や肺、心臓、神経、腎臓、眼などの臓器で生命や生活の質低下にかかわるような異常が生じた場合は、副腎皮質ステロイドによる治療を行います。
(文責:久保田 未央)

非結核性抗酸菌症

非結核性抗酸菌症とは結核菌とライ菌以外の抗酸菌による感染症の総称で、肺や皮膚に感染を起こす病気です。複数の菌種が含まれますが、7~8割ぐらいはMAC(Mycobacterium-avium complex)と呼ばれる菌で占められています。これらは水、土壌、じん埃などの環境中に常在する環境菌であり、結核菌と異なりヒトからヒトへの感染はありません。近年は肺MAC症が中高年女性を中心に急増しており、原因として先述の居住環境の土壌や浴室が感染源として注目されています。治療は抗結核薬を含む複数の薬剤を併用して行います。慢性の感染症なので完治するケースは少なく、長期間の治療が必要です。ただし自然軽快することもあるため、軽症では治療を行わずに定期的に胸部レントゲンや胸部CTで経過観察する場合もあります。
(文責:桑原 雄紀)

自然気胸・胸水貯留

自然気胸は肺に元々存在する空洞(ブラ、ブレブ)が損傷し発症することが多く、肺から流失した空気が胸膜腔に貯留する病気です。一方、胸水貯留は、生理的に5ml程度は潤滑液として存在している胸水が、種々の原因(多くは悪性腫瘍や感染症)で多量に産生され吸収されず残存している状態をいいます。いずれも空気または胸水が胸膜腔に貯留し、肺が広がりにくくなることで呼吸困難を生じます。胸膜腔内の空気や胸水が多い場合は、胸の外から直径6mm程度のチューブを挿入して脱気や排液を行う必要があります。
(文責:桑原 雄紀)

悪性胸膜中皮腫

主に胸部の肺を包んでいる胸膜の表面に発生する悪性腫瘍で、その発症には石綿(アスベスト)が関与していることが知られています。従来、石綿関連職域に発生する職業病と考えられてきましたが、極めて低濃度の暴露を受けた方からも発生することが明らかとなっています。悪性胸膜中皮腫は非常に治りにくい難しい病気の1つです。治療法には、外科療法(手術)、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)および対症療法などがあります。どのような治療法を行うかは、病状(病期)や全身状態により決定されます。
(文責:桑原 雄紀)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」はコロナウイルスのひとつです。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれます。COVID-19は2019年末から発生したのを皮切りに急速に全世界へと拡大しました。多くは風邪症状(発熱、せき、鼻水、咽頭痛など)のみで軽症ですが、高齢の方を初め基礎疾患(心疾患、呼吸器疾患、糖尿病、腎臓病、免疫不全など)を有する一部の方では重症化する可能性が高い病気です。COVID-19に対する薬物治療は、①抗ウイルス薬、②免疫調整薬・免疫抑制薬、③抗凝固薬、④その他に大別されます。現在日本ではCOVID-19 に適応を有する薬剤は限られていますが、新たな治療法やワクチンの開発に向けて、日進月歩でCOVID-19に関する知見が集積しています。
(文責:桑原 雄紀)