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佐賀県医療センター好生館

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組織横断的医療チーム

栄養管理の重要性

はじめに

 消化器外科に従事していて栄養管理を見直す機会を得て以来、栄養療法がいかに重要かを実感しています。
 人が生活していくのには栄養は不可欠であり、ましてや何らかの疾病を抱えた状況ではなおさら重要となります。ただし一般に1週間以内で経口摂取が可能となることが予想される人には栄養療法の必要はありません。例えば下痢を伴う急性腸炎や風邪などですし、軽症の脳血管障害や軽症の肺炎などもそうかもしれません。しかし1~2週間以上経口摂取が困難と予想される患者や、重篤な疾患を有する状態では早期からの経腸栄養や経静脈栄養による栄養療法が必要となります。
 健康な我々でも1~2週間1/2~1/3以下の食事で生活させられれば消耗しきってしまうはずです。以前は重症肺炎や回復が遅い脳血管障害患者、あるいは癌化学療法による副作用で長期に経口困難となった患者さんが、末梢からの点滴ボトル1日2~3本で長期間管理されているのをよく見かけました。3大栄養素である蛋白も脂肪も含まず、1日たった200~600kcalの糖分のみでは創傷などを含めた治癒能力が維持できるはずもなく、少なくとも栄養療法とは言えません。これは単なる水分や電解質補給と考えるべきでしょう。日本には“断食”などの考えもありますが、ある種の病態には有効かも知れませんが、多くの場合は病態を悪化させてしまいます。
 最近では栄養管理が普及し、ごく当たり前に行われつつあるためか、上記のような栄養治療の不備があり不幸な転帰をたどった場合、訴訟による敗訴の一因にもなってきています。しかしそのような誤った考え方や投与がなされている例も少なくありません。

静脈栄養

 静脈栄養では2週間以上静脈栄養が必要であれば中心静脈栄養が必要となり、1~2週間以内に経口摂取が可能となることが予想されるか、あるいは幾分か経口摂取や経腸投与がなされているが充足していない場合は末梢静脈栄養の適応とされています。
 しかし最近では末梢輸液管理においても糖と同時にアミノ酸や脂肪が投与可能となり、末梢静脈でも比較的バランス良く1日1400~1500kcal程度は投与出来るようになりました。
 従来、胃全摘術後は1週間程度の絶食期間の後、徐々に摂食増加をしていましたので中心静脈栄養を行い管理していましたが、10年程前より胃全摘術後も上記の末梢輸液管理としています。
 また、最近では胃全摘術でも術後3~5日で経口摂取を開始する施設(当館では5日)が増加してきましたのでますます周術期栄養管理は簡便になってきています。

アミノ酸添加末梢輸液製剤

 末梢静脈栄養用のアミノ酸添加輸液製剤は、非常に便利であり使用しやすいのですが、これのみの投与では適正ではありません。
 たとえば市販の同製剤を2000ml投与すると、栄養補給としてのアミノ酸は60gとなり充分量ですが、総カロリーは800kcal強にすぎず、総カロリー不足のためせっかく投与したアミノ酸は蛋白とはならずエネルギー源として消費されてしまう可能性が大きくなります。末梢からこれ以上の糖付加は困難ですので脂肪乳剤の投与が必要となります。

脂肪乳剤

 脂肪乳剤が本邦へ輸入された当時は、米国では週1~2回投与(必須脂肪酸欠乏の予防としての投与)が一般的であり、欧州では連日投与(日常栄養としての投与)が原則とされていました。
 日本への導入にあたっては、米国での投与法を採用し保険収載されたため、本邦でも週1~2回投与で始まったと考えられます。しかし長期にわたる栄養管理としては、脂肪は毎日摂取すべきものであり、可能であれば連日投与が望ましいと考えます。ただ、脂肪乳剤の投与に関しては注意が必要です。
 それは投与速度です。脂肪乳剤の投与速度は0.1g/kg/hr以下が適正であり、一般的には10%200mL製剤では4時間、20%250mL製剤では10時間かけて投与する事が望ましいとされています。通常投与された人工脂肪はHDLからのアポ蛋白の供給によりリポ蛋白化し、リポ蛋白リパーゼ(LPL)により脂肪酸とグリセロールに加水分解されて利用されます。
 この脂肪乳剤の投与速度が速いとアポ蛋白の供給が間に合わなくなり、リポ蛋白化できない人工脂肪粒子が加水分解されず血中に留まってしまい、時には700~800mg/dlもの高脂血症となってしまいます。また異物として認識された人工脂肪が肝臓や脾臓のクッパー細胞などの網内系にトラップされるために網内系細胞が減少し、免疫力低下をきたしたり塞栓を引き起こしたりする可能性があります。さらには凝固系にも影響を及ぼすと言われています。
 逆に投与速度が守られていれば殆どの病態において投与可能と考えられます(敗血症や高度肝機能障害などは保険適応がありませんが・・・)。このようによかれと思い投与した脂肪が仇となる事もありますので、上記速度は厳守する必要があります。外来投与の場合は時間的になかなか困難ではありますが、実験上は上記速度の1.5倍程度まではぎりぎり許容範囲と思われます。

 糖も注意が必要です。高カロリー輸液などで過剰に投与された糖分は、肝臓で脂肪に変換され高脂血症や脂肪肝の原因となります。
 経静脈的な糖の利用可能な投与速度は5mg/kg/min(7.2g/kg/day)とされています。つまり50kgの人では1日に360g(1440kcal)以上の糖投与がなされると余分な糖は脂肪に変換されるということです。低栄養は問題ですが、過剰投与もまた危険であり、最近では社会的にもメタボリックシンドロームなど問題になっているところです。

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経腸栄養

 経腸栄養剤は経口、経鼻経管、PEG、PTEG等の投与法があります。食事摂取が不足している患者さんなどには経腸栄養剤を補助食品として経口投与する事も行われますが、その際に問題となるのが栄養剤の種類です。
 栄養剤には医薬品と食品とがありますが、在宅(外来)の場合には保険適応がないため医薬品が使用しにくいのが現状です。佐賀県医師会からもその必要性を訴えて承認申請がなされましたが、現時点ではまだ認められておりません。
 そこで在宅の場合は食品栄養剤を個人購入していただくことになります。現在では高濃度なものや様々な病態に即したものなど多種類の食品栄養剤が販売されており、通販や宅配が可能なものもあるので管理栄養士から患者さんへ紹介して貰っています。

経鼻経管投与

 経鼻経管投与ではチューブの選択が重要です。通常の消化管減圧に用いる胃管はその多くが塩化ビニル製であり、咽頭の違和感が強く時間の経過と共にその硬度が増し、1週間以上経過すると逆流症状や潰瘍形成、さらには胃壁を突き破る事さえあります。
 若干高価ではありますがシリコンやポリウレタン製の栄養投与専用のチューブの方が違和感が少なく、経過と共に柔らかくなり違和感が薄れてくるため長期投与の場合には非常に有用です。
 われわれ消化器外科領域でも経口摂取困難な食道癌患者の術前栄養補給や化学療法施行中で食欲低下を来した担癌患者に対しては頻用しています。サイズは5Fr,8Fr,10Fr,12Frとありますが、5Frは成分栄養剤用(エレンタールなど)であり、通常の栄養剤では8~12Frが妥当です。細径である方が患者さんへの苦痛は少ないですが詰まりやすいので緻密な管理が必要となります。

PTEG (経皮経食道胃管挿入術)

 経腸栄養が更に長期に及ぶ場合にはPEG造設により管理されることも多くみられますが、胃切除後の患者さんや腹水を有する患者さんでのPEG造設は困難な場合があります。そういった場合、1998年に開発されたPTEG (Percutaneous Trans-Esophageal Gastrotubing:経皮経食道胃管挿入術)が有用です。レントゲン透視下で経皮的に食道を穿刺し、経食道的に胃あるいは十二指腸までチューブを誘導留置する方法です。
 内視鏡を必要とせず、超音波装置(エコー)下に施行できるため、比較的簡便に留置可能です。ただし有用であるにもかかわらず、約2年半ほど前よりPEGと違い保険適応からはずされてしまったことが難点となっています。

栄養管理のモニタリング

 これら栄養管理が順調にいっているかを判断する指標としては血中アルブミン(Alb)がよく用いられます。しかしAlbは半減期が約3週間と長いために、管理が適正としてもAlbが上昇するのは2~3週間後ですのでモニタリングの指標としては適していません。
 有用なのは急性相反応蛋白(Rapid turnover protein:RTP)といわれ半減期が短いトランスフェリン(Tf:半減期7日)、トランスサイレチン(プレアルブミン/TTR:半減期2日)、レチノール結合蛋白(RBP:半減期0.5日)などです。TTRを良く測定しますが、これも保険適応範囲が狭いことが障害となっています。過剰投与に対するモニタリングも必要です。
 糖に関しては血中glucose、脂肪に関しては中性脂肪、アミノ酸に関しては血中尿素窒素(BUN)測定がそれぞれの栄養素の過剰投与判定に有用であり、急性期では週に1回は測定しています。

まとめ

 こういう栄養管理を症例個々や各疾患治療に応じて適切に実施することをnutrition supportt(栄養サポート、栄養支援)といい、この栄養サポートを職種の壁を越えて医師、看護師、栄養士、薬剤師、検査技師などで実践する集団(チーム)を栄養サポートチーム(nutrition supoport team;NST)といいます。
 最近では多くの病院に設置され、九州では100床以上の病院に問い合わせた結果、約80%の病院で稼働しているとのことでした。栄養管理は、すべての疾患治療のうえで共通する基本的医療の一つです。
 栄養管理をおろそかにすると、いかなる治療法も効力を失い、さらに侵襲的な治療法に伴う副作用や合併症の発生を容易にすることが指摘されています。したがって、栄養管理が確立されたうえで種々の疾患に対する治療を実施することはごく当然のことであると思われます。

佐賀県医療センター好生館 がん診療統括部長
栄養サポートチームリーダー
佐藤 清治

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